クイズになりそうな盤面がGG杯であったと聞いたので、解説してみます。





【問題】
 プレイヤーAは《エネルギー・フィールド》《安らかなる眠り》《精神を刻む者、ジェイス》(忠誠度3)をコントロールしている。Aのターン終了前、プレイヤーBは《稲妻》を唱えた。

A「対象は?」
B「放っておけないから《ジェイス》で」
A「ん? 《エネルギー・フィールド》貼ってあるよ?」
B「《ジェイス》へのダメージだから、軽減できないんじゃないの?」

 プレイヤーBの《稲妻》は、《ジェイス》の忠誠度カウンターを取り除くことができるだろうか?

【前提1:常識的な話】
 ご存知かと思いますが、そもそも、《稲妻》の対象は《ジェイス》になり得ません。
Lightning Bolt (R) Instant
Lightning Bolt deals 3 damage to target creature or player.

 オラクルにはっきりと「クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする」って書いてありますので。
 では、なぜ問題のようなやりとりが頻繁に行われているか。総合ルール306.7を見てみます。
306.7. 対戦相手のコントロールする発生源からの、戦闘ダメージでないダメージがプレイヤーに与えられる場合、その対戦相手はその代わりにその発生源にそのダメージをそのプレイヤーのコントロールするプレインズウォーカーに与えさせることを選んでもよい。これは移し変え効果(rule 614.9 参照)であり、置換効果の順番に関する通常のルール(rule 616 参照)に従う。その対戦相手は、その移し替え効果が適用されるに際して、ダメージを移し変えるかどうかを選ぶ。

 言い換えれば「プレイヤーPに与えられる、戦闘ダメージでないダメージの発生源のプレイヤーQは、そのダメージをPの代わりにPのコントロールするプレインズウォーカーに与えてもよい」ということです。
 問題で言う「《稲妻》を《ジェイス》に」というのは、「《稲妻》をプレイヤーAを対象に唱えて、解決されたら、プレイヤーAへのダメージは《ジェイス》に移し変える」ということを短縮して言っていることになります。

※蛇足ですが、《稲妻》等の火力をプレイヤーを対象に唱えた場合、ダメージをどうするかは解決時に発生源のプレイヤーが決めるため、どこにダメージを与えるか聞いてから打ち消したりすることはできません。

【前提2:オラクルとルール確認】
 《エネルギー・フィールド》オラクルは下記の通り。
Energy Field (1)(U) Enchantment
Prevent all damage that would be dealt to you by sources you don’t control.
When a card is put into your graveyard from anywhere, sacrifice Energy Field.

 Preventという単語が入っている効果は「軽減効果」と呼ばれます。総合ルール615.1に記載されています。
615.1. 継続的効果の一部は、軽減効果である。置換効果(rule 614 参照)と同様に、軽減効果はイベントが発生する際に継続的に適用される。事前に固定されるわけではない。この種の効果は発生しうるダメージを待ち、その全部あるいは一部を軽減する。その影響を及ぼすものに対する「盾」のように機能する。
615.1a 「軽減/prevent」という語を用いた効果は軽減効果である。軽減効果は、どのダメージが与えられないかを示すために「軽減」の語を用いる。

 また、プレインズウォーカーへのダメージの「移し変え効果」は、【前提】で引用した総合ルール306.7の通り「置換効果」と呼ばれます。

【本題】
 さて、問題のケースのとき、
(1)《稲妻》のダメージをプレイヤーAの代わりに《ジェイス》に与える「置換効果」
(2)《稲妻》のダメージを軽減し0にする「軽減効果」
 という2つが《稲妻》に関わろうとしています。1つのイベントに対して、2つの置換・軽減効果が適用されようとしています。こういう場合の規定がしっかりあり、総合ルール616.1に定められています。
616.1. 複数の置換・軽減効果がいずれかのオブジェクトやプレイヤーに影響を及ぼす単一のイベントを修整しようとした場合、影響を受けるオブジェクトをコントロールしているプレイヤー(コントローラーがいないならオーナー)、または影響を受けるプレイヤーがどれを適用するか、以下の手順で決める。複数のプレイヤーが同時に選択を行なう場合、選択はAPNAP順(rule 101.4 参照)で行なう。
 616.1a 置換・軽減効果の中に自己置換効果(rule 614.15 参照)があれば、その中の1つを選ぶ。なければ、rule 616.1b に進む。
 616.1b 置換・軽減効果の中に、オブジェクトが誰のコントロール下で戦場に出すかを修整する効果があれば、その中の1つを選ぶ。なければ、rule 616.1c に進む。
 616.1c 置換・軽減効果の中に、戦場に出るオブジェクトを他のオブジェクトのコピーにする効果があれば、その中の1つを選ぶ。なければ、rule 616.1d に進む。
 616.1d 適用可能な置換・軽減効果の中から、どの効果を選んでもよい。
 616.1e 選ばれた効果が適用された後、(その時点で適用できる置換効果や軽減効果があれば)適用できる効果がなくなるまでこの手順を繰り返す。

 【問題】の場合は影響を受けるのはプレイヤーAなので、この場合はプレイヤーAに選択権があります。つまり、(1)を先に適用するか(2)を先に適用するかを決めてよい、ということになります。

・(1)を先に適用した場合
 まず、《稲妻》はプレイヤーAの代わりに《ジェイス》に3点のダメージを与えようとします。次に(2)を適用しようとする時点で、軽減すべきプレイヤーAへのダメージが存在していないので、何も起こりません。よって《ジェイス》の忠誠度カウンターはダメージ分減り、【問題】の場合、忠誠度カウンターが0になるため、次の状況起因処理のチェック時に墓地に置かれます。

・(2)を先に適用した場合
 まず、《稲妻》のダメージが軽減され0になります。その後、《稲妻》のダメージを《ジェイス》に移し変えようとしますが、ダメージは0に軽減されており「ダメージを与えない」ものとして扱われる(総合ルール614.7a)ため、何も起こりません。よって《ジェイス》の忠誠度に増減はありません。

 もし自分がジャッジとして裁定を出す場合は、「上記の通り置換・軽減効果が2つあり、適用順の選択権はAさんにある」とした上で、上記について説明し、どちらを選ぶかを選択してもらうよう促します。





 ちょっとややこしいので細かく覚える必要はないんですが、少なくとも青白コンや火力を使う人は結果だけでも覚えておきましょう。

コメント

j
2013年4月24日12:38

どうも件の当事者です
PWへのダメージはプレイヤーへのダメージの移し変えだから
軽減されてジェイスに当たらないだろうと言うのが
その場での結論でしたが
軽減と移し変えの選択を挟むとは分かりませんでした
勉強になりました
ちなみにその場はさっさと投了し
次のゲームに進んだのですが
手札にあった頭蓋割りの効果に後から気付いて
一人でこっそり動揺してました

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