(以下前編kogamoさんリスペクト)
いよいよ基本セット2014(以下「M14」)が発売になりました! M14が入ったことでメタゲームはどう動くのか、気になるところです。
今回は早速、先日行われた「StarCityGames Open/Classic」の結果を元に、各種アーキタイプがどのように強化されたか、またメタゲームはどのように動いたかを見ていきましょう。
【M14発売前のメタゲーム】
Tier1:
白緑黒リアニメイト、グルール・アグロ、ナヤ人間ビートダウン、バント・オーラ
Tier1.5:
ナヤ中速ビートダウン、白赤黒《貴種》、白緑黒《貴種》、白青赤コントロール、赤単
Tier2:
ジャンドコントロール、ラクドスビートダウン
とにかく「白緑黒リアニメイト」がメタゲームを支配していました。通常のコンボ系リアニメイトと違って墓地対策だけでは行動を封じられず、かといって墓地対策をしないとリソースの差で負けてしまう、という、対策するのが難しいデッキでした。
唯一の対抗手段が「スピード」、つまり《スラーグ牙》《静穏の天使》着地前にすばやく殴りきる、というもので、これに特化した「グルール・アグロ」「ナヤ人間ビートダウン(Naya Blitz)」がそれを追いかける展開になっていました。また、ブン回りすれば負けるデッキが少ない「バント・オーラ」も非常に強力です。
M14から、新戦力になりそうなカードを見ていきましょう。
○《生命散らしのゾンビ》
メタの上位に白・緑のクリーチャーが非常に多く、またメタ上にこれをブロックできるクリーチャーが極端に少ないため、これの存在は意識せざるを得ません。
しかし、色拘束の関係上、うまく使えるデッキがラクドス・アグロぐらいしかありません。ラクドスには、同じマナ域に超強力な《ゲラルフの伝書使》がいるため、サイドカードに落ち着く可能性が高い、とも予想していました。
○《漁る軟泥》
レガシーでお世話になっている人も多いでしょう。トップメタのリアニメイト対策として十分すぎる性能を誇ります。先出しすれば除去を強要でき、後半に引いても強いため、2マナとしては破格の性能です。メインから投入しても腐らないのも魅力です。
すぐに動き出せない《死儀礼のシャーマン》との二択ですが、基本スペックの高いこちらが採用されることになるでしょう。うまく緑マナが捻出できるデッキが少ないのが向かい風ですが、ナヤ中速を中心に良く見かけるカードになると予想しています。
○《ザスリッドの屍術士》
いわゆる《貴種》系のデッキを強化する1枚です。《宿命の旅人》《カルテルの貴種》とのシナジーの強力さには目を見張るものがあります。自身にちょっとした除去耐性があることもあり、ツボにはまれば圧倒的な強さを発揮します。しかし、あるカードの収録が逆風となっており、どこまで活躍できるかは未知数です。
○《威圧する君主》
速攻系ビートダウンの弱みとして、ブロッカーが1体立っているだけで攻撃にいけない場合がある、というものがありました。《ボロスの反攻者》が最たる例です。この人間クリーチャーは、自身が攻撃に参加できる《盲従》で、ブロッカーの登場を1ターン遅らせることができます。高速アグロにおいてこの1ターンは非常に大きく、またミラーマッチの先手・後手を入れ替えうる強力なカードです。
マナバランスは不安ですが、ナヤ人間ビートダウンに投入したいところです。
○《魔女跡追い》《鬼斬の聖騎士》
どちらもバント・オーラを強化する超強力なクリーチャーです。特に、赤系アグロにとっては《鬼斬の聖騎士》は異様な強さを発揮します。バント・オーラから《聖トラフトの霊》や《復活の声》は抜けてしまうのでは、と思ったぐらいスペックが異様に高いカードです。
やはりマナ拘束だけが気になります。バント・オーラには特に《鬼斬の聖騎士》を投入したいところです。
○《破滅の刃》
ナヤ中速ビートダウンの《雷口のヘルカイト》を効率的に除去できるだけでなく、環境に跋扈する《ロクソドンの強打者》《ボロスの反攻者》といった厄介者を後腐れなく除去できる、待望の一枚です。
間違いなく各種デッキに積まれてくると思うので、もともとこれでは除去できないクリーチャーの価値が相対的に上がる気がします。具体的には《幽霊議員オブゼダート》《オリヴィア・ヴォルダーレン》等です。
○《原始の報奨》
初見では、《軍団の結集》と似たような印象を受けました。プレインズウォーカーのように運用できる爆弾エンチャントです。
これまで後半も1対1交換をしていかざるを得なかったビートダウン系やジャンドコントロールが、リソースを多く得ることができるというのは非常に強力です。重いですが、使う価値はあるんじゃないかなと思いました。
○《漸増爆弾》
《貴種》系やトークンデッキに絶大な効果を誇るだけでなく、高速アグロには基本的に腐ることがなく、またコントロール系の置物にも触ることができるため、汎用性の高い除去です。
動き出しが遅いためコントロール向けですが、《貴種》系対策のために他のデッキにも積まれると予想しています。
こんなところでしょうか。メタゲームにも影響を与えそうなカードも散見されますね。
では実際はどうだったのか、入賞デッキを見ながら検討してみましょう。
【入賞数とメタゲーム変化】
<SCG Open>
白緑ビートダウン
白緑黒《貴種》
エスパーコントロール
ジャンドコントロール
赤単
グルール・アグロ
白緑ビートダウン
白緑黒《貴種》
<SCG Classic>
白黒《貴種》
ジャンドコントロール
緑単アグロ
ジャンドコントロール
白青赤フラッシュ
ジャンドコントロール
ナヤ高速ビートダウン
白単人間
蓋を開けてみれば、《生命散らしのゾンビ》の影響など微塵も感じない緑の多さです。環境初期と言うこともあるでしょうが、ジャンドがTOP8の16人中4人と最多。つづいて《貴種》系のデッキが3人という結果になりました。特筆すべきは、白緑黒リアニメイトが完全に絶滅した、ということです。なお、16人中12人が緑絡みのデッキを使用しています。
早速、各種デッキを見ていきましょう。
新戦力として《漁る軟泥》《破滅の刃》《漸増爆弾》が追加されています。
ジャンドコントロールは、「ほとんどの」デッキと丸く戦える、ポテンシャルの高いデッキでした。ただひとつ、トップメタの白緑黒リアニメイトとの相性は絶望的で、メインに《地の封印》まで採用していたほどです。
今回得た《漁る軟泥》は文字通り期待の新星で、苦手な序盤を抑えつつ、リアニメイトも封じることができるという、弱点をぴったり補完できるカードです。また、ジャンドがもともと除去系コントロールということもあり、終盤に出てくれば巨大なフィニッシャーにもなれます。6/6になれば、同系での《スラーグ牙》のにらみ合いも一方的に制することができます。惜しげもなく4枚も採用されているあたり、リアニメイトへの意識の高さが伺えますし、こうすることで《ラクドスの復活》をメインに2枚採用することができます。
サイドボードには、ルールの変更でよりバント・オーラ対策としての側面が高くなった《リリアナ》、トークン系対策の《漸増爆弾》《死の支配の呪い》、さらにコントロール対決の決め手《地下世界の人脈》と、抜け目がありません。
優勝を含む3人が《貴種》を使用しましたが、優勝したのは白黒《貴種》でした。新加入の《ザスリッドの屍術士》と生け贄エンジン+《血の芸術家》のコンボは強烈で、簡単に10点以上のライフを持っていきます。《屍術士》を最大限に生かすため《町民の結集》を、またそれと相性のいい《教区の勇者》を1マナアタッカーに採用しています。《漸増爆弾》の存在だけが向かい風ですが、ポテンシャルを遺憾なく見せ付けた形になります。
アグロ系では比較的早く動けるため、《生命散らしのゾンビ》も有効に使えますし、《破滅の刃》も他のアクションの合間に使えます。
なお、他の《貴種》は白緑黒で《復活の声》を採用した従来の形です。新規カードが0枚のデッキも入賞するなど、ポテンシャルの高さを見せ付けました。
「環境初期は赤単が強い」と言われますが、今回も例に漏れず赤系アグロが入賞してきました。これは赤単タッチ緑のグルール・アグロですが、赤単もランクインしています。
真新しいカードは採用されていないように思われますが、サイドボードに爆弾が潜んでいます――《燃え立つ大地》がそれです。この特殊地形限定の《魔力のとげ》は、現在の多色環境をあざ笑うかのように現れたカードです。一度ライフ差をつけてこれを通してしまえば、多色デッキは全く身動きがとれなくなります。ボード差・ライフ差をつけてのこのカードは対処必須です。
なお、クリーチャー戦を見越してメインに《向こう見ずな技術》を採用している例も多く見られました。《火山の力》より突破力があり修正値も高いので、タイトなライフレースの際には非常に役立ちますね。
SCG Classicの1位は、なんと、前回のメタでは少数派だった2色のビートダウンです。これはセレズニア・ビートダウンですが、鉄板の《ロクソドンの強打者》が1枚も採用されていない珍しい形です。
鉄板・《漁る軟泥》の他に新しいカードが続々投入されています。まず、《テューンの大天使》は白緑待望の大型フライヤー。《漁る軟泥》との相性が異様によく、これによって8体のマナクリーチャーが、後半になっても無駄なく使えます。また、弾薬補充に最適な《獣の統率者、ガラク》も、マナクリーチャーが多いこのデッキなら有効に使えます。良いシナジーです。
クリーチャーデッキなのに、サイドボードにはなんと《終末》。それだけクリーチャー戦が多いと踏んでのことでしょうが・・・。新カード《天界のほとばしり》はバント・オーラとのマッチングを解消する1枚です。2色で構成されたこのデッキなら、早いターンに構えることができるでしょう。除去に難儀することが多いため、汎用除去の《ギルドとの縁切り》《忘却の輪》と状況に応じて使い分けることができます。若干枠を割き過ぎな感があるので、ジャンドがトップメタに返り咲いた現状、《ロクソドンの強打者》《鷺群れのシガルダ》はサイドにはやはり欲しいところです。
2色や単色のデッキが多くなったように見られますが、これは先程の《燃え立つ大地》の影響だと思われます。赤系アグロの増加、それに伴う《燃え立つ大地》の増加によって3色のデッキが淘汰されていく中、あまり効果のない単色・2色のデッキが勝ち進んでいったのでしょう。
【M14によるメタゲームの変化は?】
今回の勝ち組はジャンド・赤系アグロ・《貴種》といえるでしょう。一方、負け組――勝てなかったデッキは「白緑黒リアニメイト」「バント・オーラ」「白青赤コントロール(フラッシュ)」です。
まずリアニメイトですが、言わずもがな《漁る軟泥》の大量採用が原因でしょう。《死儀礼のシャーマン》と違い即効性がある墓地対策カードで、しかもメインから積まれているとなれば、戦略は瓦解してしまいます。今後この傾向が続くようであれば、活躍は厳しいでしょう。
バント・オーラは、《天界のほとばしり》《ヴェールのリリアナ》《肉貪り》等の採用が多く見られた関係で活躍できなかった模様です。かなり意識されていた模様です。加えて、キーカードが3マナに寄り過ぎて《漸増爆弾》の餌食になってしまうという弱点も露呈しました。軸をずらした戦い方を求められています。
白青赤コントロールは、赤系アグロの《燃え立つ大地》がかなりきつく、また《貴種》デッキには《至高の評決》が効かないため、良いところなく封殺されてしまった模様です。ただし、《火柱》《至高の評決》《スフィンクスの啓示》《雲散霧消》と、各種デッキに対する回答を備えている唯一のデッキなので、構成を変えれば依然として戦えるポテンシャルがあります。
大きくまとめると、下記のようになります。
【今後のメタゲームは?】
今回の結果を受けて、暫定的にメタゲームをおさらいしてみましょう。
ジャンドコントロールがまた復権しました。しかし、この王座は暫定的なものになりそうです。もともと高速アグロ系に対しての回答が《スラーグ牙》と除去による対処のため、対策をされるとそのまま押し切られてしまう可能性が高いためです。
新たな武器を得た《貴種》、赤単は安定した地位を築いていますが、実はどちらもカードパワーの不足が目立つ色です。そのため、カードパワーで押してくる中速ビートと戦うには、苦戦を強いられそうです。
まだまだ予断を許さないメタゲームです。特に環境初期ということもあり、ローグも含めた様々なデッキが出てくるでしょう。
大会等で勝ちに行くのであれば、基本的なデッキパワーの高いデッキが有利でしょう。しかし、サイドボードへは必ずTier1への回答を用意しましょう(ジャンドなら《鷺群れのシガルダ》《原始の報奨》、貴種デッキなら《終末》《電謀》など)。また、早いデッキは活躍しやすい傾向にあるため、赤単系やナヤ人間など、ブン回りのあるデッキを持ち込むのも選択肢の一つです。
それではこの辺で。さようならー。
いよいよ基本セット2014(以下「M14」)が発売になりました! M14が入ったことでメタゲームはどう動くのか、気になるところです。
今回は早速、先日行われた「StarCityGames Open/Classic」の結果を元に、各種アーキタイプがどのように強化されたか、またメタゲームはどのように動いたかを見ていきましょう。
【M14発売前のメタゲーム】
Tier1:
白緑黒リアニメイト、グルール・アグロ、ナヤ人間ビートダウン、バント・オーラ
Tier1.5:
ナヤ中速ビートダウン、白赤黒《貴種》、白緑黒《貴種》、白青赤コントロール、赤単
Tier2:
ジャンドコントロール、ラクドスビートダウン
とにかく「白緑黒リアニメイト」がメタゲームを支配していました。通常のコンボ系リアニメイトと違って墓地対策だけでは行動を封じられず、かといって墓地対策をしないとリソースの差で負けてしまう、という、対策するのが難しいデッキでした。
唯一の対抗手段が「スピード」、つまり《スラーグ牙》《静穏の天使》着地前にすばやく殴りきる、というもので、これに特化した「グルール・アグロ」「ナヤ人間ビートダウン(Naya Blitz)」がそれを追いかける展開になっていました。また、ブン回りすれば負けるデッキが少ない「バント・オーラ」も非常に強力です。
M14から、新戦力になりそうなカードを見ていきましょう。
○《生命散らしのゾンビ》
メタの上位に白・緑のクリーチャーが非常に多く、またメタ上にこれをブロックできるクリーチャーが極端に少ないため、これの存在は意識せざるを得ません。
しかし、色拘束の関係上、うまく使えるデッキがラクドス・アグロぐらいしかありません。ラクドスには、同じマナ域に超強力な《ゲラルフの伝書使》がいるため、サイドカードに落ち着く可能性が高い、とも予想していました。
○《漁る軟泥》
レガシーでお世話になっている人も多いでしょう。トップメタのリアニメイト対策として十分すぎる性能を誇ります。先出しすれば除去を強要でき、後半に引いても強いため、2マナとしては破格の性能です。メインから投入しても腐らないのも魅力です。
すぐに動き出せない《死儀礼のシャーマン》との二択ですが、基本スペックの高いこちらが採用されることになるでしょう。うまく緑マナが捻出できるデッキが少ないのが向かい風ですが、ナヤ中速を中心に良く見かけるカードになると予想しています。
○《ザスリッドの屍術士》
いわゆる《貴種》系のデッキを強化する1枚です。《宿命の旅人》《カルテルの貴種》とのシナジーの強力さには目を見張るものがあります。自身にちょっとした除去耐性があることもあり、ツボにはまれば圧倒的な強さを発揮します。しかし、あるカードの収録が逆風となっており、どこまで活躍できるかは未知数です。
○《威圧する君主》
速攻系ビートダウンの弱みとして、ブロッカーが1体立っているだけで攻撃にいけない場合がある、というものがありました。《ボロスの反攻者》が最たる例です。この人間クリーチャーは、自身が攻撃に参加できる《盲従》で、ブロッカーの登場を1ターン遅らせることができます。高速アグロにおいてこの1ターンは非常に大きく、またミラーマッチの先手・後手を入れ替えうる強力なカードです。
マナバランスは不安ですが、ナヤ人間ビートダウンに投入したいところです。
○《魔女跡追い》《鬼斬の聖騎士》
どちらもバント・オーラを強化する超強力なクリーチャーです。特に、赤系アグロにとっては《鬼斬の聖騎士》は異様な強さを発揮します。バント・オーラから《聖トラフトの霊》や《復活の声》は抜けてしまうのでは、と思ったぐらいスペックが異様に高いカードです。
やはりマナ拘束だけが気になります。バント・オーラには特に《鬼斬の聖騎士》を投入したいところです。
○《破滅の刃》
ナヤ中速ビートダウンの《雷口のヘルカイト》を効率的に除去できるだけでなく、環境に跋扈する《ロクソドンの強打者》《ボロスの反攻者》といった厄介者を後腐れなく除去できる、待望の一枚です。
間違いなく各種デッキに積まれてくると思うので、もともとこれでは除去できないクリーチャーの価値が相対的に上がる気がします。具体的には《幽霊議員オブゼダート》《オリヴィア・ヴォルダーレン》等です。
○《原始の報奨》
初見では、《軍団の結集》と似たような印象を受けました。プレインズウォーカーのように運用できる爆弾エンチャントです。
これまで後半も1対1交換をしていかざるを得なかったビートダウン系やジャンドコントロールが、リソースを多く得ることができるというのは非常に強力です。重いですが、使う価値はあるんじゃないかなと思いました。
○《漸増爆弾》
《貴種》系やトークンデッキに絶大な効果を誇るだけでなく、高速アグロには基本的に腐ることがなく、またコントロール系の置物にも触ることができるため、汎用性の高い除去です。
動き出しが遅いためコントロール向けですが、《貴種》系対策のために他のデッキにも積まれると予想しています。
こんなところでしょうか。メタゲームにも影響を与えそうなカードも散見されますね。
では実際はどうだったのか、入賞デッキを見ながら検討してみましょう。
【入賞数とメタゲーム変化】
<SCG Open>
白緑ビートダウン
白緑黒《貴種》
エスパーコントロール
ジャンドコントロール
赤単
グルール・アグロ
白緑ビートダウン
白緑黒《貴種》
<SCG Classic>
白黒《貴種》
ジャンドコントロール
緑単アグロ
ジャンドコントロール
白青赤フラッシュ
ジャンドコントロール
ナヤ高速ビートダウン
白単人間
蓋を開けてみれば、《生命散らしのゾンビ》の影響など微塵も感じない緑の多さです。環境初期と言うこともあるでしょうが、ジャンドがTOP8の16人中4人と最多。つづいて《貴種》系のデッキが3人という結果になりました。特筆すべきは、白緑黒リアニメイトが完全に絶滅した、ということです。なお、16人中12人が緑絡みのデッキを使用しています。
早速、各種デッキを見ていきましょう。
Jund Midrange
Tristan Woodsmith
4th Place at StarCityGames.com Classic on 7/21/2013
Lands (25)
4 Blood Crypt
3 Dragonskull Summit
2 Kessig Wolf Run
4 Overgrown Tomb
4 Rootbound Crag
4 Stomping Ground
4 Woodland Cemetery
Creatures (15)
4 Huntmaster of the Fells
4 Scavenging Ooze
4 Thragtusk
3 Olivia Voldaren
Spells (17)
2 Doom Blade
2 Putrefy
3 Bonfire of the Damned
1 Dreadbore
4 Farseek
1 Mizzium Mortars
2 Pillar of Flame
2 Rakdos’s Return
Planeswalkers (3)
2 Garruk, Primal Hunter
1 Liliana of the Veil
Sideboard
3 Ratchet Bomb
2 Curse of Death’s Hold
2 Underworld Connections
1 Garruk, Primal Hunter
3 Liliana of the Veil
1 Dreadbore
2 Pillar of Flame
1 Rakdos’s Return
新戦力として《漁る軟泥》《破滅の刃》《漸増爆弾》が追加されています。
ジャンドコントロールは、「ほとんどの」デッキと丸く戦える、ポテンシャルの高いデッキでした。ただひとつ、トップメタの白緑黒リアニメイトとの相性は絶望的で、メインに《地の封印》まで採用していたほどです。
今回得た《漁る軟泥》は文字通り期待の新星で、苦手な序盤を抑えつつ、リアニメイトも封じることができるという、弱点をぴったり補完できるカードです。また、ジャンドがもともと除去系コントロールということもあり、終盤に出てくれば巨大なフィニッシャーにもなれます。6/6になれば、同系での《スラーグ牙》のにらみ合いも一方的に制することができます。惜しげもなく4枚も採用されているあたり、リアニメイトへの意識の高さが伺えますし、こうすることで《ラクドスの復活》をメインに2枚採用することができます。
サイドボードには、ルールの変更でよりバント・オーラ対策としての側面が高くなった《リリアナ》、トークン系対策の《漸増爆弾》《死の支配の呪い》、さらにコントロール対決の決め手《地下世界の人脈》と、抜け目がありません。
1st Place:オルゾフトークン プレイヤー:AJ Sacher
7:《平地/Plains》
5:《沼/Swamp》
4:《神無き祭殿/Godless Shrine》
4:《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
2:《変わり谷/Mutavault》
1:《オルゾフのギルド門/Orzhov Guildgate》
23 lands
4:《血の芸術家/Blood Artist》
1:《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》
4:《カルテルの貴種/Cartel Aristocrat》
4:《教区の勇者/Champion of the Parish》
4:《宿命の旅人/Doomed Traveler》
4:《ザスリッドの屍術師/Xathrid Necromancer》
21 creatures
3:《イニストラードの君主、ソリン/Sorin, Lord of Innistrad》
1:《オルゾフの魔除け/Orzhov Charm》
4:《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
4:《町民の結集/Gather the Townsfolk》
4:《未練ある魂/Lingering Souls》
16 other spells
1:《真髄の針/Pithing Needle》
2:《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》
2:《罪の収集者/Sin Collector》
2:《無形の美徳/Intangible Virtue》
1:《精霊への挑戦/Brave the Elements》
2:《破滅の刃/Doom Blade》
2:《利得/Profit》
1:《幽霊議員オブゼダート/Obzedat, Ghost Council》
2:《脳食願望/Appetite for Brains》
15 sideboard cards
優勝を含む3人が《貴種》を使用しましたが、優勝したのは白黒《貴種》でした。新加入の《ザスリッドの屍術士》と生け贄エンジン+《血の芸術家》のコンボは強烈で、簡単に10点以上のライフを持っていきます。《屍術士》を最大限に生かすため《町民の結集》を、またそれと相性のいい《教区の勇者》を1マナアタッカーに採用しています。《漸増爆弾》の存在だけが向かい風ですが、ポテンシャルを遺憾なく見せ付けた形になります。
アグロ系では比較的早く動けるため、《生命散らしのゾンビ》も有効に使えますし、《破滅の刃》も他のアクションの合間に使えます。
なお、他の《貴種》は白緑黒で《復活の声》を採用した従来の形です。新規カードが0枚のデッキも入賞するなど、ポテンシャルの高さを見せ付けました。
R/G Aggro
Anthony Cook
6th Place at StarCityGames.com Classic on 7/21/2013
Lands (20)
10 Mountain
4 Rootbound Crag
4 Stomping Ground
2 Temple Garden
Creatures (28)
4 Boros Reckoner
4 Burning-Tree Emissary
4 Flinthoof Boar
4 Ghor-Clan Rampager
4 Hellrider
4 Rakdos Cackler
4 Stromkirk Noble
Spells (12)
3 Madcap Skills
4 Searing Spear
1 Armed
4 Pillar of Flame
Sideboard
3 Burning Earth
4 Volcanic Strength
2 Electrickery
2 Skullcrack
2 Domri Rade
2 Mizzium Mortars
「環境初期は赤単が強い」と言われますが、今回も例に漏れず赤系アグロが入賞してきました。これは赤単タッチ緑のグルール・アグロですが、赤単もランクインしています。
真新しいカードは採用されていないように思われますが、サイドボードに爆弾が潜んでいます――《燃え立つ大地》がそれです。この特殊地形限定の《魔力のとげ》は、現在の多色環境をあざ笑うかのように現れたカードです。一度ライフ差をつけてこれを通してしまえば、多色デッキは全く身動きがとれなくなります。ボード差・ライフ差をつけてのこのカードは対処必須です。
なお、クリーチャー戦を見越してメインに《向こう見ずな技術》を採用している例も多く見られました。《火山の力》より突破力があり修正値も高いので、タイトなライフレースの際には非常に役立ちますね。
G/W Midrange
James Newman
1st Place at StarCityGames.com Classic on 7/21/2013
Lands (24)
9 Forest
5 Plains
2 Gavony Township
4 Sunpetal Grove
4 Temple Garden
Creatures (26)
3 Angel of Serenity
4 Arbor Elf
3 Archangel of Thune
4 Avacyn’s Pilgrim
4 Scavenging Ooze
4 Thragtusk
4 Voice of Resurgence
Spells (8)
4 Advent of the Wurm
4 Selesnya Charm
Planeswalkers (2)
2 Garruk, Caller of Beasts
Sideboard
3 Centaur Healer
2 Oblivion Ring
2 Rest in Peace
3 Celestial Flare
3 Renounce the Guilds
2 Terminus
SCG Classicの1位は、なんと、前回のメタでは少数派だった2色のビートダウンです。これはセレズニア・ビートダウンですが、鉄板の《ロクソドンの強打者》が1枚も採用されていない珍しい形です。
鉄板・《漁る軟泥》の他に新しいカードが続々投入されています。まず、《テューンの大天使》は白緑待望の大型フライヤー。《漁る軟泥》との相性が異様によく、これによって8体のマナクリーチャーが、後半になっても無駄なく使えます。また、弾薬補充に最適な《獣の統率者、ガラク》も、マナクリーチャーが多いこのデッキなら有効に使えます。良いシナジーです。
クリーチャーデッキなのに、サイドボードにはなんと《終末》。それだけクリーチャー戦が多いと踏んでのことでしょうが・・・。新カード《天界のほとばしり》はバント・オーラとのマッチングを解消する1枚です。2色で構成されたこのデッキなら、早いターンに構えることができるでしょう。除去に難儀することが多いため、汎用除去の《ギルドとの縁切り》《忘却の輪》と状況に応じて使い分けることができます。若干枠を割き過ぎな感があるので、ジャンドがトップメタに返り咲いた現状、《ロクソドンの強打者》《鷺群れのシガルダ》はサイドにはやはり欲しいところです。
2色や単色のデッキが多くなったように見られますが、これは先程の《燃え立つ大地》の影響だと思われます。赤系アグロの増加、それに伴う《燃え立つ大地》の増加によって3色のデッキが淘汰されていく中、あまり効果のない単色・2色のデッキが勝ち進んでいったのでしょう。
【M14によるメタゲームの変化は?】
今回の勝ち組はジャンド・赤系アグロ・《貴種》といえるでしょう。一方、負け組――勝てなかったデッキは「白緑黒リアニメイト」「バント・オーラ」「白青赤コントロール(フラッシュ)」です。
まずリアニメイトですが、言わずもがな《漁る軟泥》の大量採用が原因でしょう。《死儀礼のシャーマン》と違い即効性がある墓地対策カードで、しかもメインから積まれているとなれば、戦略は瓦解してしまいます。今後この傾向が続くようであれば、活躍は厳しいでしょう。
バント・オーラは、《天界のほとばしり》《ヴェールのリリアナ》《肉貪り》等の採用が多く見られた関係で活躍できなかった模様です。かなり意識されていた模様です。加えて、キーカードが3マナに寄り過ぎて《漸増爆弾》の餌食になってしまうという弱点も露呈しました。軸をずらした戦い方を求められています。
白青赤コントロールは、赤系アグロの《燃え立つ大地》がかなりきつく、また《貴種》デッキには《至高の評決》が効かないため、良いところなく封殺されてしまった模様です。ただし、《火柱》《至高の評決》《スフィンクスの啓示》《雲散霧消》と、各種デッキに対する回答を備えている唯一のデッキなので、構成を変えれば依然として戦えるポテンシャルがあります。
大きくまとめると、下記のようになります。
・《漁る軟泥》の登場で、リアニメイトが絶滅。それにより、リアニメイトを苦手としていたジャンドコントロールが再び(いや、三度)台頭。
・赤系アグロの《燃え立つ大地》がコントロールや中速・低速の多色デッキを封殺。その一方で、2色や単色のデッキが増加。
・《漸増爆弾》はやはり強く、さまざまなデッキに投入されている。早いデッキか、1~2回の全体除去に耐えて粘り強く戦えるデッキが成果を残している。
【今後のメタゲームは?】
今回の結果を受けて、暫定的にメタゲームをおさらいしてみましょう。
Tier1
ジャンドコントロール(↑)、白黒緑《貴種》(↑)、グルール・アグロ、赤単(↑)
Tier1.5
セレズニアビートダウン(↑)、バント・オーラ(↓)、ナヤ人間ビートダウン(↓)
Tier2
ナヤ中速ビートダウン(↓)、白青赤コントロール(フラッシュ)
ジャンドコントロールがまた復権しました。しかし、この王座は暫定的なものになりそうです。もともと高速アグロ系に対しての回答が《スラーグ牙》と除去による対処のため、対策をされるとそのまま押し切られてしまう可能性が高いためです。
新たな武器を得た《貴種》、赤単は安定した地位を築いていますが、実はどちらもカードパワーの不足が目立つ色です。そのため、カードパワーで押してくる中速ビートと戦うには、苦戦を強いられそうです。
まだまだ予断を許さないメタゲームです。特に環境初期ということもあり、ローグも含めた様々なデッキが出てくるでしょう。
大会等で勝ちに行くのであれば、基本的なデッキパワーの高いデッキが有利でしょう。しかし、サイドボードへは必ずTier1への回答を用意しましょう(ジャンドなら《鷺群れのシガルダ》《原始の報奨》、貴種デッキなら《終末》《電謀》など)。また、早いデッキは活躍しやすい傾向にあるため、赤単系やナヤ人間など、ブン回りのあるデッキを持ち込むのも選択肢の一つです。
それではこの辺で。さようならー。
コメント
それが言いたいだけちゃうんかと