それまで大きな大会もなく、実質上「最初の」大会となった本大会。
メタゲームが読めない中、「どのデッキ相手にも強い動き」が人気を占めました。
1st:Jeskai Tempo
2nd:Jeskai Splash
3rd:5C Bring to Light Midrange
4th:4C Rally
5th:Mardu Green
6th:Dredge
7th:Mardu Green
8th:Grixis Control
【Abzan Aggro】
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05208W/
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05209W/
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05211W/
1年前のスタンダードの再現のような「アブザン」。環境でも多くのプレイヤーが選択したようですが、TOP8には入りませんでした。カードプールの拡大によって様々な選択肢が生まれたかと思いきや、上位ラインでは当時からの必須カードである《ドロモカの命令》《アブザンの魔除け》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》という2、3、4マナラインは確保され、そのままになっています。
変わったのは低マナクリーチャーの選択です。多くのリストの1マナ域に《エルフの神秘家》、2マナ域に《密輸人の回転翼機》が採用されています。
《エルフの神秘家》は、当時の鉄板の動きである3T《アナフェンザ》4T《包囲サイ》を1ターン早めてくれる、相手からすると悪夢のようなカードです。このカードの採用により、「カラデシュ」のファストランドを多く採用しても《包囲サイ》《ギデオン》が4Tに出ない、という事態を防げます。また、積極的にタップ状態になれるので《アナフェンザ》との相性の良さも見逃せません。
《密輸人の回転翼機》は、《羊毛鬣のライオン》を失って以来永遠の課題だった2マナ域に颯爽と現れた新星です。手薄な航空戦力がカバーでき、全体除去への耐性もあり、ルーター能力によるカードの引き増し、そして後半の《エルフの神秘家》や《アナフェンザ》ともシナジーがあるなど、欲しかった要素がすべて詰め込まれています。
この2種のカードの追加により、デッキの高速化や安定性が増し、どのデッキに対しても強い前述の動きの押しつけが強化されました。ナチュラルに《先祖の結集》を対策できる骨太のアグロデッキとして、今後も活躍しそうです。しかし、TOP8に入賞しませんでした。その理由が下記です。
【Jeskai Splash(ダークジェスカイ)】
アブザンアグロの対抗馬として、環境のコントロールに「Jeskai Splash(ダークジェスカイ)」の選択が目立ったためだと思われます。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05215W/
クリーチャーデッキ(特にアブザン)に強い《はじける破滅》、そして長期戦に強いカードが揃っている、攻守のバランスが取れたデッキです。以前、「カードプールの拡大によって一番恩恵を受けるアーキタイプ」と紹介しましたが、「基本セット2015」から「カラデシュ」までの強力カードがまんべんなく詰め込まれています。
三上さんのデッキを見て、スタンダード時代から強化されているのは3つのポイント。《稲妻の一撃》《時を超えた探索》《奔流の機械巨人》です。
《稲妻の一撃》は、今のスタンダードでは見られない「プレイヤー本体に打てる除去」です。基本的にクリーチャーデッキが多いため無駄にはなりづらいですが、プレインズウォーカーへの対処も可能となる点は見逃せません。
《時を超えた探索》はフロンティアを象徴する一枚で、多くの青いデッキが採用しています。モダンやレガシーで禁止になったその実力は折り紙付きで、1回通すだけで劣勢を挽回する力を持っています。さらに《奔流の機械巨人》によって再度唱える動きは、ゲームを決定付ける威力があります。
その《奔流の機械巨人》はいままで《黄金牙、タシグル》頼りだった部分を補う、待望のフィニッシャーです。大振りですが出す際の隙が少なく、大型で、出たときに仕事をする、というフィニッシャー要件を満たしており、場合によっては《コラガンの命令》等によって使いまわしも可能です。《タシグル》に使う墓地リソースを《探索》に振り分けられるのも大きなメリットです。
今後はAbzan Aggro側も《搭載歩行機械》《風番いのロック》などの除去耐性のあるカードを積極採用し、《はじける破滅》耐性を高めることが重要になりそうです。
【Jeskai Tempo】
下馬評ではAbzan対Jeskai Splashの構図でしたが、優勝は、一風変わった「純正ジェスカイ」でした。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05214W/
鈴木さんのリストは、「Deck Tech」でも取り上げられていますので、詳しくはそちらをご参照ください。
優勝に至った要因を追加で解説するならば、「相手よりも常に一歩早いデッキ」ということが挙げられます。
たとえば《霊廟の放浪者》《無私の霊魂》といったカードは、このデッキの基本軸である《密輸人の回転翼機》《カマキリの乗り手》というメインアクションへの応手を1回無効化する、いわば「先置きの打ち消し呪文」のように機能します。こういったカードを使うことで《呪文捕らえ》も長生きできるようになります。そういった先置きのアクションも、すべて飛行クリーチャーとしてのクロック性能があり、対策を整えているうちにライフを失ってしまいます。危険域まで削られ凌ごうとするも、すでに8枚の火力呪文による致死圏内――という、罠のような状況を作り込まれてしまうのです。
また、相手のアクションを狭める選択肢が盛り込まれており、《反射魔道士》《ジェスカイの魔除け》によって能動的な展開が制限され、またスペルも《霊廟の放浪者》《呪文捕らえ》で刈り取られる危険性があるため、相手が安全策を取るか、空撃ちをしてテンポロスを嫌うかの二択状態になり、結果どちらかの道に誘導されてしまいます。
デッキには反省点もあるようですが、やはり「どのデッキに対しても強い動き」ができる点で優れており、非常に良くできたデッキです。ただし、デッキのクロックは非常に細いため、デッキへの理解度、環境理解度が要求されるため、乗りこなすのは難しいでしょう。
【4C Rally(《先祖の結集》コンボ)】
環境における唯一のコンボとして猛威を振るうかと思われた4C Rallyですが、TOP8に1人を送り出すのみとなりました。Abzanに標準搭載される《アナフェンザ》、2対1交換を強要してくるJeskai Splashに対して、《集合した中隊》までの動きが弱い点が原因のようです。また、多くのデッキが《神聖なる月光》《トーモッドの墓所》をサイドに採用するなど、警戒されていたことが分かります。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05217W/
堀内さんのリストは、コンボに重きを置いており、コンボパーツの完成を早める《時を超えた探索》と、コンボ阻害を防ぐ《呪文捕らえ》が採用されています。
従来のリストは、《先祖の結集》やコンボパーツを引くために《ジェイス》《地下墓地の選別者》といったパーツで無理やり探しに行くスタイルでしたが、場合によっては相当数のカードを引かなければいけません。《時を超えた探索》で各パーツへアクセスしやすくする工夫がなされています。この枠は《召喚の調べ》との兼ね合いもありますが、《集合した中隊》+《探索》で手に入れた4枚で、更地から一気にコンボを達成する爆発力は魅力的です。
《呪文捕らえ》は、Bant Companyでよく見られた《集合した中隊》との二択を相手に迫り、大振りなアクションをけん制します。また、不足しがちな空中クロックのため、致命的なカードの受けや残りライフの削り取りなど、このデッキの足りない部分を補います。
従来のアグレッシブ・サイドボード枠は《ギデオン》でしたが、出ればライフの詰めが早く、忠誠度も高い《生命の力、ニッサ》が採用され、より対処が難しくなっています。《ギデオン》との一番の違いは、《はじける破滅》への耐性で、叩きつけ合いならこちらに軍配が上がります。ヘビーコントロールには《ギデオン》も強く1マナ軽いので、どちらを何枚採用するかはこれから研究しがいがありそうですね。
【その他】
フロンティアがどのような環境か、と聞かれれば、「どの相手にも強い動きをするデッキが組めれば、アーキタイプにこだわらず戦える環境」ということが、トップ8のデッキタイプの多様性から伺えます。
カバレージの各Deck Tech(Jeskai Tempo、Dredge、Elves、Atarka Red)も参照してください。いずれのデッキも上位にランクインしています。特に9位のElvesには注目です。《パンハモニコン》を使ったデッキというのはフロンティアならではですね。
ここでは、その他のデッキを簡単に解説します。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05216W/
3位入賞の《白日の下に》は70枚構築。3T《軍族の解体者》or《包囲サイ》からの4T以降の《新緑の機械巨人》連打のムーブで相手を踏み潰す構成です。つい1枚挿しを増やしたくなりますがそこをぐっとこらえ、上記の「強い動き」の確率を高めることで、デッキの動きを安定化させています。マナクリーチャー3種と《霊気との調和》で、2→4→5のラインを安定させることに注力しています。
必勝パターンに持ち込めない場合も、《放浪する森林》で戦線を支えることができます。大型連打がアグロ系に強いです。今後、ミッドレンジの主要アーキタイプとして成立するかどうか、要注目です。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05221W/
8位の高尾さんのデッキは、ほぼ純正のUB Controlです。タッチ赤はメインの《コラガンの命令》、サイドボードからの《炙り焼き》《苦い真理》に使用します。打ち消しと全体除去、少数のフィニッシャーで構成された、古式ゆかしいコントロールデッキです。
序盤の攻防の重要性は認識されていたようで、スタンダードでもあまり見かけない《革命的拒絶》がメインから3枚投入されています。フロンティアではスタンダードほどの裏目(=《密輸人の回転翼機》)がなく、後半は《ジェイス》《集団的蛮行》で捨ててしまえばいいため、初手に欲しい1枚として多めに投入されています。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05212W/
現在のスタンダードにおける押しも押されもせぬTier1のBG Delirium。フロンティアのマナベースであれば3色目のタッチも容易です。3色目に赤を加えたJund Deliriumはパターンが多く考えられますが、なんとここに居座ったのは《ゴブリンの熟練扇動者》と、《強大化》+《ティムールの激闘》パッケージでした。
全体除去が少ない環境ほど《ゴブリンの熟練扇動者》は輝きますので、今回のメタを見ると選択は正しかったようです。各種トランプル持ちやユーティリティクリーチャーを揃えることで《強大化》単体でも仕事をするように組まれています。「分からん殺し」は環境初期の醍醐味でもありますので、今後生き残るかどうか注目ですね。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05213W/
スタンダードで渡辺雄也プロが使用して爆発的な人気を生んだ「Bant-Human Company」。「人間」が増えることでフロンティアでは優位が出る、と前回の記事で書きましたが、実際に試して好成績を収めた方もいたようです。
ほぼ当時のスタンダードのカードで構成されていますが、加わった《始まりの木の管理人》《アブザンの鷹匠》によってフィニッシュ力や継戦能力を強化しています。シンプルかつ完成度の高いリストですが、4色目を検討するとRallyに強い《アナフェンザ》などが加えられますので、多色化の検討余地もありそうです。
【まとめ】
初回の大型大会はJeskai Tempoの優勝で幕を閉じました。環境初期らしく、非常にバラエティに富んだ内容でした。多くの方が懸念していたAbzan対Jeskaiという特定のアーキタイプへの集中傾向は見られませんでした。
これは「自分の使いたいカードを使いたい」というプレイヤーのモチベーションによるものか、「強い動きにアーキタイプは重要ではない」ということの証左なのかは、まだ分かりません。しかし、この環境は「どのデッキにも強い動きをしっかり確立する」ことが重要だ、ということが結果から読み取れます。それさえできれば、デッキの自由度は高い環境、と言えるのではないでしょうか。
次回の大会を心待ちにしつつ、色々試してみると思わぬ発見があるかもしれません。
フロンティアフォーマットの大会は全国の店舗で開催されています。ぜひお近くの大会まで、足を延ばしてみてください。
メタゲームが読めない中、「どのデッキ相手にも強い動き」が人気を占めました。
1st:Jeskai Tempo
2nd:Jeskai Splash
3rd:5C Bring to Light Midrange
4th:4C Rally
5th:Mardu Green
6th:Dredge
7th:Mardu Green
8th:Grixis Control
【Abzan Aggro】
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05208W/
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05209W/
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05211W/
1年前のスタンダードの再現のような「アブザン」。環境でも多くのプレイヤーが選択したようですが、TOP8には入りませんでした。カードプールの拡大によって様々な選択肢が生まれたかと思いきや、上位ラインでは当時からの必須カードである《ドロモカの命令》《アブザンの魔除け》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》という2、3、4マナラインは確保され、そのままになっています。
変わったのは低マナクリーチャーの選択です。多くのリストの1マナ域に《エルフの神秘家》、2マナ域に《密輸人の回転翼機》が採用されています。
《エルフの神秘家》は、当時の鉄板の動きである3T《アナフェンザ》4T《包囲サイ》を1ターン早めてくれる、相手からすると悪夢のようなカードです。このカードの採用により、「カラデシュ」のファストランドを多く採用しても《包囲サイ》《ギデオン》が4Tに出ない、という事態を防げます。また、積極的にタップ状態になれるので《アナフェンザ》との相性の良さも見逃せません。
《密輸人の回転翼機》は、《羊毛鬣のライオン》を失って以来永遠の課題だった2マナ域に颯爽と現れた新星です。手薄な航空戦力がカバーでき、全体除去への耐性もあり、ルーター能力によるカードの引き増し、そして後半の《エルフの神秘家》や《アナフェンザ》ともシナジーがあるなど、欲しかった要素がすべて詰め込まれています。
この2種のカードの追加により、デッキの高速化や安定性が増し、どのデッキに対しても強い前述の動きの押しつけが強化されました。ナチュラルに《先祖の結集》を対策できる骨太のアグロデッキとして、今後も活躍しそうです。しかし、TOP8に入賞しませんでした。その理由が下記です。
【Jeskai Splash(ダークジェスカイ)】
アブザンアグロの対抗馬として、環境のコントロールに「Jeskai Splash(ダークジェスカイ)」の選択が目立ったためだと思われます。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05215W/
クリーチャーデッキ(特にアブザン)に強い《はじける破滅》、そして長期戦に強いカードが揃っている、攻守のバランスが取れたデッキです。以前、「カードプールの拡大によって一番恩恵を受けるアーキタイプ」と紹介しましたが、「基本セット2015」から「カラデシュ」までの強力カードがまんべんなく詰め込まれています。
三上さんのデッキを見て、スタンダード時代から強化されているのは3つのポイント。《稲妻の一撃》《時を超えた探索》《奔流の機械巨人》です。
《稲妻の一撃》は、今のスタンダードでは見られない「プレイヤー本体に打てる除去」です。基本的にクリーチャーデッキが多いため無駄にはなりづらいですが、プレインズウォーカーへの対処も可能となる点は見逃せません。
《時を超えた探索》はフロンティアを象徴する一枚で、多くの青いデッキが採用しています。モダンやレガシーで禁止になったその実力は折り紙付きで、1回通すだけで劣勢を挽回する力を持っています。さらに《奔流の機械巨人》によって再度唱える動きは、ゲームを決定付ける威力があります。
その《奔流の機械巨人》はいままで《黄金牙、タシグル》頼りだった部分を補う、待望のフィニッシャーです。大振りですが出す際の隙が少なく、大型で、出たときに仕事をする、というフィニッシャー要件を満たしており、場合によっては《コラガンの命令》等によって使いまわしも可能です。《タシグル》に使う墓地リソースを《探索》に振り分けられるのも大きなメリットです。
今後はAbzan Aggro側も《搭載歩行機械》《風番いのロック》などの除去耐性のあるカードを積極採用し、《はじける破滅》耐性を高めることが重要になりそうです。
【Jeskai Tempo】
下馬評ではAbzan対Jeskai Splashの構図でしたが、優勝は、一風変わった「純正ジェスカイ」でした。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05214W/
鈴木さんのリストは、「Deck Tech」でも取り上げられていますので、詳しくはそちらをご参照ください。
優勝に至った要因を追加で解説するならば、「相手よりも常に一歩早いデッキ」ということが挙げられます。
たとえば《霊廟の放浪者》《無私の霊魂》といったカードは、このデッキの基本軸である《密輸人の回転翼機》《カマキリの乗り手》というメインアクションへの応手を1回無効化する、いわば「先置きの打ち消し呪文」のように機能します。こういったカードを使うことで《呪文捕らえ》も長生きできるようになります。そういった先置きのアクションも、すべて飛行クリーチャーとしてのクロック性能があり、対策を整えているうちにライフを失ってしまいます。危険域まで削られ凌ごうとするも、すでに8枚の火力呪文による致死圏内――という、罠のような状況を作り込まれてしまうのです。
また、相手のアクションを狭める選択肢が盛り込まれており、《反射魔道士》《ジェスカイの魔除け》によって能動的な展開が制限され、またスペルも《霊廟の放浪者》《呪文捕らえ》で刈り取られる危険性があるため、相手が安全策を取るか、空撃ちをしてテンポロスを嫌うかの二択状態になり、結果どちらかの道に誘導されてしまいます。
デッキには反省点もあるようですが、やはり「どのデッキに対しても強い動き」ができる点で優れており、非常に良くできたデッキです。ただし、デッキのクロックは非常に細いため、デッキへの理解度、環境理解度が要求されるため、乗りこなすのは難しいでしょう。
【4C Rally(《先祖の結集》コンボ)】
環境における唯一のコンボとして猛威を振るうかと思われた4C Rallyですが、TOP8に1人を送り出すのみとなりました。Abzanに標準搭載される《アナフェンザ》、2対1交換を強要してくるJeskai Splashに対して、《集合した中隊》までの動きが弱い点が原因のようです。また、多くのデッキが《神聖なる月光》《トーモッドの墓所》をサイドに採用するなど、警戒されていたことが分かります。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05217W/
堀内さんのリストは、コンボに重きを置いており、コンボパーツの完成を早める《時を超えた探索》と、コンボ阻害を防ぐ《呪文捕らえ》が採用されています。
従来のリストは、《先祖の結集》やコンボパーツを引くために《ジェイス》《地下墓地の選別者》といったパーツで無理やり探しに行くスタイルでしたが、場合によっては相当数のカードを引かなければいけません。《時を超えた探索》で各パーツへアクセスしやすくする工夫がなされています。この枠は《召喚の調べ》との兼ね合いもありますが、《集合した中隊》+《探索》で手に入れた4枚で、更地から一気にコンボを達成する爆発力は魅力的です。
《呪文捕らえ》は、Bant Companyでよく見られた《集合した中隊》との二択を相手に迫り、大振りなアクションをけん制します。また、不足しがちな空中クロックのため、致命的なカードの受けや残りライフの削り取りなど、このデッキの足りない部分を補います。
従来のアグレッシブ・サイドボード枠は《ギデオン》でしたが、出ればライフの詰めが早く、忠誠度も高い《生命の力、ニッサ》が採用され、より対処が難しくなっています。《ギデオン》との一番の違いは、《はじける破滅》への耐性で、叩きつけ合いならこちらに軍配が上がります。ヘビーコントロールには《ギデオン》も強く1マナ軽いので、どちらを何枚採用するかはこれから研究しがいがありそうですね。
【その他】
フロンティアがどのような環境か、と聞かれれば、「どの相手にも強い動きをするデッキが組めれば、アーキタイプにこだわらず戦える環境」ということが、トップ8のデッキタイプの多様性から伺えます。
カバレージの各Deck Tech(Jeskai Tempo、Dredge、Elves、Atarka Red)も参照してください。いずれのデッキも上位にランクインしています。特に9位のElvesには注目です。《パンハモニコン》を使ったデッキというのはフロンティアならではですね。
ここでは、その他のデッキを簡単に解説します。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05216W/
3位入賞の《白日の下に》は70枚構築。3T《軍族の解体者》or《包囲サイ》からの4T以降の《新緑の機械巨人》連打のムーブで相手を踏み潰す構成です。つい1枚挿しを増やしたくなりますがそこをぐっとこらえ、上記の「強い動き」の確率を高めることで、デッキの動きを安定化させています。マナクリーチャー3種と《霊気との調和》で、2→4→5のラインを安定させることに注力しています。
必勝パターンに持ち込めない場合も、《放浪する森林》で戦線を支えることができます。大型連打がアグロ系に強いです。今後、ミッドレンジの主要アーキタイプとして成立するかどうか、要注目です。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05221W/
8位の高尾さんのデッキは、ほぼ純正のUB Controlです。タッチ赤はメインの《コラガンの命令》、サイドボードからの《炙り焼き》《苦い真理》に使用します。打ち消しと全体除去、少数のフィニッシャーで構成された、古式ゆかしいコントロールデッキです。
序盤の攻防の重要性は認識されていたようで、スタンダードでもあまり見かけない《革命的拒絶》がメインから3枚投入されています。フロンティアではスタンダードほどの裏目(=《密輸人の回転翼機》)がなく、後半は《ジェイス》《集団的蛮行》で捨ててしまえばいいため、初手に欲しい1枚として多めに投入されています。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05212W/
現在のスタンダードにおける押しも押されもせぬTier1のBG Delirium。フロンティアのマナベースであれば3色目のタッチも容易です。3色目に赤を加えたJund Deliriumはパターンが多く考えられますが、なんとここに居座ったのは《ゴブリンの熟練扇動者》と、《強大化》+《ティムールの激闘》パッケージでした。
全体除去が少ない環境ほど《ゴブリンの熟練扇動者》は輝きますので、今回のメタを見ると選択は正しかったようです。各種トランプル持ちやユーティリティクリーチャーを揃えることで《強大化》単体でも仕事をするように組まれています。「分からん殺し」は環境初期の醍醐味でもありますので、今後生き残るかどうか注目ですね。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05213W/
スタンダードで渡辺雄也プロが使用して爆発的な人気を生んだ「Bant-Human Company」。「人間」が増えることでフロンティアでは優位が出る、と前回の記事で書きましたが、実際に試して好成績を収めた方もいたようです。
ほぼ当時のスタンダードのカードで構成されていますが、加わった《始まりの木の管理人》《アブザンの鷹匠》によってフィニッシュ力や継戦能力を強化しています。シンプルかつ完成度の高いリストですが、4色目を検討するとRallyに強い《アナフェンザ》などが加えられますので、多色化の検討余地もありそうです。
【まとめ】
初回の大型大会はJeskai Tempoの優勝で幕を閉じました。環境初期らしく、非常にバラエティに富んだ内容でした。多くの方が懸念していたAbzan対Jeskaiという特定のアーキタイプへの集中傾向は見られませんでした。
これは「自分の使いたいカードを使いたい」というプレイヤーのモチベーションによるものか、「強い動きにアーキタイプは重要ではない」ということの証左なのかは、まだ分かりません。しかし、この環境は「どのデッキにも強い動きをしっかり確立する」ことが重要だ、ということが結果から読み取れます。それさえできれば、デッキの自由度は高い環境、と言えるのではないでしょうか。
次回の大会を心待ちにしつつ、色々試してみると思わぬ発見があるかもしれません。
フロンティアフォーマットの大会は全国の店舗で開催されています。ぜひお近くの大会まで、足を延ばしてみてください。
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