日本勢(AEtherworks、B/G Constrictor+Picker)が2位、3位と健闘したものの、優勝自体はMono-B Zombiesがかっさらった格好に。TOP8のMardu Vehicles不在、AEtherworksの返り咲き、そしてZombiesの台頭など、《守護フェリダー》の禁止により様々な動きが起こった先週末。
目下スタンダードプレイヤーが一番興味のあるであろう、「黒単ゾンビって強いの?弱いの?」ということを考察してみる。個人的にも興味があるし。結論を先に言うと、「弱いデッキではないが、前環境のMardu Vehiclesほどの支配率にはなり得ない」と本記事では推察。論拠を下記に述べていこうと思う。
【前提として】
【Mono-B Zombiesの動きとキーカード】
【強み】
さらに3だが、たとえ《戦墓の巨人》すべてを即時除去できたとしても、基本アドの取れる《リリアナの支配》《闇の救済》、そして無駄牌変換とドローができる《墓所破り》がおり、1対1交換を繰り返してくるコントロール戦略にも強い。
ここまで聞くと普通に強いデッキだ。
【弱み】
加えて、そういった相手に取れる戦略が狭く、また黒単ゆえのサイドボードの貧弱さが克服できない。一応トップメタ相手には《失われた遺産》《没収》といった摘出系スペル、《精神背信》あたりのテンポ重視ハンデスがある程度効くものの、根本的な解決には至らない。QFのVS AEtherworks戦(Christian Calcano対Martin Muller)で、「相手のデッキリストを知っている」というアドバンテージがあったため、早めに《炎呼び、チャンドラ》と《ウラモグ》を全抜きしたにもかかわらず、《不屈の追跡者》から《焼けつく双陽》&《蓄霊稲妻》×2でボードが空になり負けた、という象徴的な一戦があった(なお、マッチは3-1でMartin Mullerの勝ち)。
PT優勝デッキということで注目度が高くなってしまった上、比較的安価なデッキなため多く組まれるであろうことも実は情報戦上マイナス。おそらくこれからのデッキには、白なら《燻蒸》以下《黄昏+払暁》《罪人への強襲》、赤なら《焼けつく双陽》系や《コジレックの帰還》、黒なら《鞭打つ触手》or《ヤヘンニの巧技》、青なら《岸の飲み込み》《バラルの巧技》と、全方位で対策されることは間違いない。赤系は《失われた遺産》ケアでスイーパーを散らしてくる可能性すらある。
余談だが、こういった戦略が全く通じないところにVehiclesの強さがある。PWコンと化すサイドプランが定着して久しいものの、そのままトップメタに居続けた事実は、Vehiclesの性質として「1.対策が非常に難しく、2.戦略幅が広く、3.サイドボードから多様なプランが取れる」という、Zombiesの弱みをそのままひっくり返したような強さがあるからだ。
【補足】
プロ達が今回使用したのは、「機体に有利、霊気池もマークが甘ければ勝てる」という見込みから選択したと思う。そもそもプロツアーではこういった分かりやすい一直線アグロは好まれない(し誰も使わない)ため、「プロツアーで勝つために」使用したに過ぎない可能性がある。
そもそも、優勝者のGerry Thompsonからして、TOP8プロフィールでこう語っている。
【これから】
対策するのも必至だし、されるのも必至。これからのゾンビ包囲網を乗り越える構築の可能性を探りながらZombiesの構築を突き詰めるのもデッキチューナーの腕の見せ所だし、逆にZombiesが十分一線級として意識されてメタが循環して、新しいデッキ(具体的には霊気池と戦える青+α系コントロール)が出てくる期待も大きい。
ちなみに、Mardu Vehicles自体は(AEtherworksを苦手としているため)今後使用者が増えるか減るかはまだわからないが、少なくとも今回の敗戦は「環境にアグロがいないのでサイドに《燻蒸》あんまり取ってませんでした、」なので、SCGの時のようにサイド《燻蒸》3枚、とか積まれると、さすがにサイド後は手が出ないだろう。
たのしみ!(脳みそメルトダウン
目下スタンダードプレイヤーが一番興味のあるであろう、「黒単ゾンビって強いの?弱いの?」ということを考察してみる。個人的にも興味があるし。結論を先に言うと、「弱いデッキではないが、前環境のMardu Vehiclesほどの支配率にはなり得ない」と本記事では推察。論拠を下記に述べていこうと思う。
【前提として】
前提1.PTの成績はリミテ6戦+スタン10戦
何をいまさら、と思うかもしれないが一応。TOP8の3敗ラインというのは、スタン7-3、リミテ6-0で達成できる。それすらとてもとても凄いんだけど、リミテの成績を加味するTOP8のデッキが「その大会を勝ち抜いた8つのデッキ」とはならない。スタンダードラウンドポイント上位のデッキが「プロツアーで勝ったデッキ」になる(当たりの関係上、必ずしもそうとは言い切れないが)。
前提2.PT参加者は洗練された465人
権利獲得者のハードルが高いとはいえ、参加者自体はGPの方がずっと多い。権利獲得方法は数あれど、その「洗練された」というところがポイントで、プロツアーで使われるデッキはある程度絞られる傾向が強い。凡百のデッキとマッチングされる確率は極めて低く、使用デッキは特定のものに収束され、メタゲーム上のデッキ数は他大会より少なくなる。
【Mono-B Zombiesの動きとキーカード】
(1)ゾンビを増やします (《墓所破り》《戦墓の巨人》《リリアナの支配》《闇の救済》)まあ分かりやすいですね。
(2)強化します(《金属ミミック》《呪われた者の王》《リリアナの支配》)
(3)アドを取ります(《戦慄の放浪者》《墓所破り》《無情な死者》)
(4)殴ります(《呪われた者の王》で威迫付与)
【強み】
1.圧倒的な展開力と攻撃力まず1について、展開力はニコ動中継タイムシフト等を参照。《戦墓の巨人》絡みの展開力は目を見張るものがある。気持ち悪いぐらいトークンが並ぶ光景は見もの。よって、手札を抱え込めれば1~2ターンで致死量のトークン生成も可能。そして2について、序盤ならスイーパーは有効だが、中盤以降はタフネス4以上が増えるため、処理を怠ると《焼けつく双陽》《光輝の炎》《ヤヘンニの巧技》では追いつかなくなってしまう。《炎呼び、チャンドラ》《コジレックの帰還》(誘発のほう)ならなんとか、といった程度。
2.サイズによるスイーパーへの耐性
3.特定のキーカードに依存しない安定性
さらに3だが、たとえ《戦墓の巨人》すべてを即時除去できたとしても、基本アドの取れる《リリアナの支配》《闇の救済》、そして無駄牌変換とドローができる《墓所破り》がおり、1対1交換を繰り返してくるコントロール戦略にも強い。
ここまで聞くと普通に強いデッキだ。
【弱み】
1.対策が比較的容易一見、質の高いアグロに見える。が、そもそも、キーカードのほとんどをクリーチャーに頼っている都合上、当たり前のようにスイーパーには弱い。ロード関係を単体除去で打ち落としたうえで先述のスイーパー、あるいは《燻蒸》あたりで問答無用に屠るのがベターな回答。当然《コジレックの帰還》が裏で使えるデッキなら一番よい。表が非常によく効く。
2.戦略幅が狭い
3.サイドボードの選択幅が狭い
加えて、そういった相手に取れる戦略が狭く、また黒単ゆえのサイドボードの貧弱さが克服できない。一応トップメタ相手には《失われた遺産》《没収》といった摘出系スペル、《精神背信》あたりのテンポ重視ハンデスがある程度効くものの、根本的な解決には至らない。QFのVS AEtherworks戦(Christian Calcano対Martin Muller)で、「相手のデッキリストを知っている」というアドバンテージがあったため、早めに《炎呼び、チャンドラ》と《ウラモグ》を全抜きしたにもかかわらず、《不屈の追跡者》から《焼けつく双陽》&《蓄霊稲妻》×2でボードが空になり負けた、という象徴的な一戦があった(なお、マッチは3-1でMartin Mullerの勝ち)。
PT優勝デッキということで注目度が高くなってしまった上、比較的安価なデッキなため多く組まれるであろうことも実は情報戦上マイナス。おそらくこれからのデッキには、白なら《燻蒸》以下《黄昏+払暁》《罪人への強襲》、赤なら《焼けつく双陽》系や《コジレックの帰還》、黒なら《鞭打つ触手》or《ヤヘンニの巧技》、青なら《岸の飲み込み》《バラルの巧技》と、全方位で対策されることは間違いない。赤系は《失われた遺産》ケアでスイーパーを散らしてくる可能性すらある。
余談だが、こういった戦略が全く通じないところにVehiclesの強さがある。PWコンと化すサイドプランが定着して久しいものの、そのままトップメタに居続けた事実は、Vehiclesの性質として「1.対策が非常に難しく、2.戦略幅が広く、3.サイドボードから多様なプランが取れる」という、Zombiesの弱みをそのままひっくり返したような強さがあるからだ。
【補足】
プロ達が今回使用したのは、「機体に有利、霊気池もマークが甘ければ勝てる」という見込みから選択したと思う。そもそもプロツアーではこういった分かりやすい一直線アグロは好まれない(し誰も使わない)ため、「プロツアーで勝つために」使用したに過ぎない可能性がある。
そもそも、優勝者のGerry Thompsonからして、TOP8プロフィールでこう語っている。
―What Standard deck are you playing and why?ここでいう「感触」というのは、まさに「Mardu VehiclesとAEtherworks相手への感触」だろうし、レベル0=あまり意識されていないからこそ勝てた、ということだと思う。まったく意識の外、というわけではないだろうけど(プロも、ZombiesがMOで勝っていた事実を軽視してはいなかったはず)。
(スタンダードのデッキは何ですか? 選んだ理由は?)
Zombies—it was level 0, but felt good.
(黒単ゾンビ。レベル0のデッキだけど、感触はよかったんだ)
【これから】
対策するのも必至だし、されるのも必至。これからのゾンビ包囲網を乗り越える構築の可能性を探りながらZombiesの構築を突き詰めるのもデッキチューナーの腕の見せ所だし、逆にZombiesが十分一線級として意識されてメタが循環して、新しいデッキ(具体的には霊気池と戦える青+α系コントロール)が出てくる期待も大きい。
ちなみに、Mardu Vehicles自体は(AEtherworksを苦手としているため)今後使用者が増えるか減るかはまだわからないが、少なくとも今回の敗戦は「環境にアグロがいないのでサイドに《燻蒸》あんまり取ってませんでした、」なので、SCGの時のようにサイド《燻蒸》3枚、とか積まれると、さすがにサイド後は手が出ないだろう。
たのしみ!(脳みそメルトダウン
コメント
機体を使う上でゾンビを使われたらきついのはわかっていたと思うのですが、そこまで流行ると思われていなかったのでしょうか。
霊気池もかなり同型メタに寄ったデッキが多かったのも印象的でした。